【「うす」踏み】
 生まれてから、初めて遠方まで行ったときは、帰ってからすぐ「うす」を踏ませ、旅の疲れを直させたものである。

 

【誕生祝い】
 初誕生の日に、座敷に本、算盤、大福帳、金鎚、筆などを並べておき、赤ん坊をそこに入れて子供の握るものを皆で見守る。本をとったら学者、算盤や大福帳を握ったら商人、金鎚は大工と言うふうに子供の将来を予測、期待し、その後赤飯などで祝いをする。

 

【里帰り】
 
嫁に行った娘は毎年正月、できるだけ大きな鏡餅を持って里帰りをする。
 両親は、その餅の大きさによって、その暮らしが楽であるかどうかを判断するのである。餅は二つ持って行き、その一つは帰りにお土産として持ち帰る、嫁入り先が貧乏な場合には、母が年末に、こっそり娘の所に餅米を送っておいて、恥ずかしい思いをさせないようにしたものである。

 

【初節句】
 五月五日の男児の節句には、菖蒲を軒にさしたり、菖蒲湯をたてて入ったりした。
 
昔、悪者に追われた時、菖蒲の沼に逃げ込み、逃げ場を失って万策尽き、持っていた太刀を菖蒲の中に逆さに立てたところに、飛びかかった悪者がその太刀に刺されて難を逃れたので、それから、菖蒲を軒にさして悪魔を避けることになっと言う話を良く聞かされたものである。

 

【三月の節句】
 旧三月三日はひな祭りで、女児の節句となっているが、元はもっと深い意味があった。農耕儀礼として物忌をし、襖(みそぎ)をしてけがれを払い、その時の形代(かたしろ)として人形を作り、それにけがれを移して流す習わしであったと伝えられる。手野でそういう行事があったかは不明だが、農耕の大切な行事の一つとして餅を撒いて祝ったものである。

 

【甘茶まつり】
 
旧四月八日お釈迦様降誕の日。お寺で甘茶を作り、甘茶台に入れておく。
 
子供達は、その甘茶をお釈迦様の像にかけた後、甘茶をビンに詰めて持ち帰る、家では、それを先ず仏壇に供えたうえで、一家中でいただくだけでなく、指につけて頭から足まで塗り、無病息災を祈る。また、ムカデの害を防ぐと言って、蚊帳にも振りかけた外、家の内外に振って毒虫、毒蛇の災害から逃れるための「おまじない」もした。

 

【夏越(なごし)】
 この日は、河童が龍宮に集まるとか、海神さんが蓋で河童を押さえているから、この日だけは、河童に尻をぬかれないと言われている。この日、神仏に上げる団子を「なごし団子」と言う。

 

【二十三夜待ち】
 旧暦二十三日の夜、替り番で座の家に集まり、持参した団子や手料理を食べながら、月の出を待った。月が出ると、それを拝んで解散したが、この行事は、楽しい話し合い、情報交換の場であった。