【綱打ち】
 
正月の内、かねて用意した縄を持ち寄って綱打ちをする習わしがあった。
 
農耕用牛馬の曳綱やツルベ綱等、一年間に必要な物をこの時に確保しておいたのである。

 

【オネブ(鬼火焼き)】
 正月も近くになると、上級生(主として6年生)の指揮の下に、オネブ焼きに使う木を集めるのが、子供の大事な行事の一つであった。
 
縄や鎌を持ち、山奥に行きグミの木を伐り、引き出し象める。その量の多さを競い合った。
 
正月七日の午後から、正月の飾りやオネブ用に集めた木・竹・グミの木・を燃やす。燃える炎を目がけ、二日に書いた書き初めを投げ入れ、その書が勢よく上がると、習字が上手になると喜んだものである。
 
また、そのオネブの火に小笹をあぶり、それで目・鼻・耳・頭などを撫でると、病気にかからないという「まじない」を行った。
 
飾り餅を竹の先に挟みオネブの火で焼き、焼けた餅は是非食べるものとされていた。餅焼きに使い、焦げた竹は散鬼杖(サギジョウ)と言い、厄払いのため門ロに立てる習慣があった。

 

【七草ずうし(七草雑炊または七草粥)】
 
春の七草「芹、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ」を米と共に炊き込み、ずうしが作られる。七草ずうしを食べると、鎌倉時代の「公事根源」にあるように、「其人万病なし」のいわれにあやかる慣習がある。

 

【精霊迎え】
 
八月十三日の日没前、黒木、水、線香、提灯をもって墓に行き、提灯に灯をつけて一時間ばかりそこにいて、それから精霊さんをつれて家に向かう。
 
途中、精霊さんは背中につかまっていられるから転ばないように用心しなければならない。仏壇には、鼻ダゴを供える。
 
十三日の夕方から精霊にさんに三人分のご飯を乗せたお膳を供えるが、それには、ススキの穂で作った箸をご飯に突き立てる。三人分の内二人分のご飯は精霊流しの時の案内をする「人足どんの飯」と呼ばれる。そしてご飯は十五日までそのままであるが、おかずの方は毎日取り替える。
 
精霊流しは、十五日の夕方であるが、舟を作るのは初盆の家だけで、他の家の供物はこの舟に便乗させてもらう。

 

【精霊とんぼ】
 
精霊さんは、とんほに乗って来られるという伝承で、子供達は空一杯に飛ぶ赤とんぼを取ってはならないと言われていた。

 

【名づけ】
 名付けは、つけたい名前を四つ、五っ選び、それを美濃紙に書いて丸め、それをお膳の上に置き、天照皇大神の御幣でかき回すと、そのうちの一つが御幣に付くので、それが神の思し召しによる名前で神から授かったとして、その名前を決めたものである。

 

【宮参り】
 男児は生後三十日、女児は三十三日を「ピアキ、ヒバレ」と言って、宮参りをする。その時お宮で、できるだけ大きな声でうんと泣いた方が、その後の育ちが良いということで、泣かせるのに苦労した。