【エートすえ(お灸のこと)】
旧二月二日と八月二日は、エートすえと言う農休日であり、交互にお灸そすえながら談笑し、身体を休めていた。灸が終わると、「ヒカリ」と言っ「みんなで御馳走を作り、一日を楽しく過ごしていた。
【エボ(目印のこと)】
エボとは、とんぼから来た言葉のようである。竹に藁を結び付けて、土穿や草原に立てると、とんぼが止まっているように見える。このエボを立てるとその一帯の草を切ってはならないと言う目印になり、村の不文律にとなっていた。
エボ草履、つのんぼ草履と言うのがあって、鼻緒の先をとんぼの羽のように結び、これを履くと、ヒラクチ(まむし)やムカゼ(むかで)に食われないといわれたものである。
【河童】
河童にまつわる話もいろいろ伝えられているが、その一つに、河童は頭の皿に水が溜まっているときは千人力を持つが、皿に水が無いときは弱いものである。
そこで、河童から相撲を挑まれたときは、先ず、自分が逆立ちをして、それから、河童にも逆立ちをさせて頭の皿の水を無くさせ、その後、相撲を取らせるべきだと言われる。
【河童とナス】
河童はなすが大好きで、夜、畑の中に入って食べてしまうので、そんなことの無いように、初物のナスを一つ必ず井戸の中に投げ入れて、水神様に供えられていたと言う。
【横座】
どこの家にもユルリ(囲炉裏)があって、家族だんらんの場になっていた。このユルリには、横座が決められ、一家の長が座る習わしであった。
【わたまし】
貴人の転宅をいう尊敬語からきた言葉で、家を新築し移転するとき、村でも「わたましの祝い」をしていた。今で言うところの落成式である。
【さんりんぼう(三隣亡)】
暦日の迷信に六曜がある。先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口で、それぞ吉凶のいわれが伝えられているが、これとは別に「さんりんぼう」と言う迷信もある。この日に家を建てれば後で火災を起こし、三隣をも亡ぼす凶日とされ、この迷信は今でも生きている。
(1823年、上田宣珍書「天草島鏡」より)
【嫁もらいの提灯】
樽披露(婚約)になる前に、親戚一同そろって嫁もらいの相談が行われるが、月夜でも、また、日中であっても、婿方の紋入り提灯を先頭にしていた、今、縁談が進行中であることを内外に示すのが目的であったと思われ、これによって相手方の承諾を促すと共に横からの口出しを封じる知恵が含まれている。
【ちゅうのう(手斧)だて】
「ちゅうのう」とは、大工道具の一つで、ちょうな(手斧)が訛ったものである。家を建築する第一歩は、この「ちゅうのう」を材木に打ち込むことで始まり、この日「ちゅうのうだて」の祝いを行う。
家を建てることは、一生の大事であり、大工ばかりでなく親戚一同に迄お世話になるところから、家主は着工に当たって宴を催し、それに招待された人は暗黙の中に協力を誓う習わしとなっている。