延慶寺の臥龍梅と司馬遼太郎

臥龍梅

 

 今日は生憎の雨模様であったが、菩提寺の兜梅が見ごろを迎えたのではないかと気になり夕方から参拝した。

 

 本堂にお参りを済ませ裏庭にまわると、家族ずれの姿があった。裏門をくぐると「もののふの つまのこころや かぶとうめ」の碑文が目に入る。

 

 天正年間の天草の合戦で、武将木山弾正の妻、お京が鎧兜を身にまとい敵陣の中に割って入ったが兜の緒がこの臥龍梅にからまり討ち取られたという。

 

司馬遼太郎の海道をゆくの中で次のように紹介されている。

 

 紫折戸を押すとすぐひらいた、なかは瀟洒な茶庭で庭としてはよほど古いものらしく思われた。さらに庭の奥へ侵入すると、雀色の夕闇いっぱいに、無数のクリーム色の点がうかんでいた。三千世界に梅の香が満ちるということばがあるが香りよりも何よりもこの場の情景は花の美しさだった。
 

 幹や枝などは、夕闇に溶けてしまって、よく見えなくなっている。無数の花だけが、宙に、地面に、浮かんでいるのである。樹齢は五百年ほどだという。ぜんたいに低く、苔の丘いっぱいにひろがっている。
 

 地に横たわりつつ幾つかの方角に伸び、幾頭かの臥竜が動いているようにも見える。……白梅にはチリ紙のように薄っぺらい白さのものが多いが、ここの梅の花は、花弁の肉質があつく、白さに生命が厚っぽく籠っているような感じがする。

 

 ともかくも、こういう梅の古木も花のいろも見たことがなく、おそらく今後も見ることがないのではないかと思われた。

 

(街道をゆく 島原・天草の諸道 司馬遼太郎)

天草の手仕事

ISIHARA  SHIP YARD

 

ISHIHARA SHIP YARD 

 

 本渡~新和~深海~浅海と天草の南東の海岸をドライブした。

 

 獅子島、黒島、産島、諸浦、長島、赤島、戸島などの島々が折り重なって多島海独特の美しい景観を見せてくれる。

 

 道路は未整備区間が多くかなりのヘアピンカーブの連続である。そのことがかえって車窓からの風景を変化に富んだものしているのかもしれない。

 

 家の軒先いっぱいに走る冷凍車、譲り合いで何度かバックして車を交わした。みんな右手を挙げてお礼のあいさつ。たまに通る私にはかえって新鮮な感覚と日本人の礼儀正しさみたいなものを感じた。

 

 国道266号線へ向かった。久玉町の大の浦のカーブで「ISHIHARA SHIP YARD」の看板。車を止め中へ入ってみた。そこには5人ほどのいかにも職人気質の人たちが。怒られるのを覚悟してお話を聞いた。

 

 ここで創られているのは東北からの注文船だそうだ。3.11東北を襲った津波、その自然の災禍から立ち上がろうとする漁師の人達からの注文とのこと。

 

 墨壺にヘラを付け手際よく厚めの板に円を描く技術者の方は失礼ながら老年の方であった。しかしへらを口に挟み次の仕事に向かう横顔が誇らしげで若々しく輝いていた。正直言って恰好良いと感じた。

 

 19トンの船、近海の漁に使われるとの事。天草の造船の手仕事が東北の漁に一日でも早い手助けとなり、安心安全な操業とそれぞれの復興にかける夢の実現を支えて欲しいと願った。「頑張れ東北、がんばれニッポン」

 

 

ISHIHARA SHIP YARD

 

 

 

第一番 明徳寺(本戸馬場)

明徳寺

 

  新四国八十八ヶ所天草霊場巡礼を今年一年かけて回ってみようと思う。

 

 先ずは今日、第一番「明徳寺」を訪ねた。階段では天草高校のハンドボール部が練習中。「おはようございます」爽やかな挨拶に心が晴れる。

 

 本渡市指定文化財の山門をくぐると庭は美しく掃き清められている。

 

 巡礼の旅の始まりにあたり安全祈願。お参りを済ませ振り返ると山門から本渡町の市街地が絵のように美しかった。

 

 写真は山門横から撮影。しだれ梅の季節はもっと美しいだろうと思った。山門横の掲示板には「寒き世を耐えて 彼岸を待つ 福寿草」の詩。春が待ち遠しい。

 

 

第二番 延命寺(本渡山口)

延命寺 

 二番所「延命寺」にお参りした。木魚と般若心経を唱える声が聞こえる。ここは、私の同級生「若山茂」君が祖父の代から守っている庵を改築した。

 その若山君はフランス在住の画家で、サロンドートンヌ入選、ナショナルボザール入選などの賞を受けているフランス芸術家協会会員である。

 

 日本で開催される展示会を見に行くがいずれも優しさに満ち溢れた絵である。

本人に気づかれない様に黙って後ろに座ること三十分、静かに木魚バチが収められた。初めて聞いた同級生のしかも画家の般若心経が不思議に心に沁みた。

 

 天草に帰ってきた時は毎日早朝より唱えるそうだ。絵も優しいが人の見えないところで一心にお経を唱える姿も優しかった。

竹林

 

 帰り道、若山君が淹れたコーヒーを飲みながら談笑。

 

 若山君の留守の時はご近所の皆さんが、庵の管理、裏山の管理、竹林の管理をされているそうだ。

 

 その延命寺の裏手にある竹林を巡った。よく手入れがいきとどいた竹林はその一本一本が天に向かって自由にのびている。その姿は美しかった。

 

 

若山茂さんのパリの画廊

http://www.galerie-lemoine.com/peintres_peintures.php?artiste=4&nom=Shigueru&prenom=Wakayama&bio=n

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