TPP 環太平洋経済連携協定
天草市民センターで、天草地区農協組合長会、熊本県農業者政治連盟天草総支部の主催による「TPP交渉に関する天草地区合同学習会」が開催された。
記念講演では東京大学大学院講師 鈴木宣弘先生より「震災復興とTPP~農業再生の対案」の演題で講演が行われた。
TPPは、2010年10月初旬から横浜で開催されたAPEC(アジア太平洋経済協力)会議。10月1日の菅直人首相による所信表明演説でTPP交渉への参加検討の言及。
前原誠司外相が「日本の国内総生産における一次産業の割合1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっている。国を開くという事を本気で考えなければ日本の競争力は低下する」と発言。「鎖国、開国」「自由貿易」「農業保護」「日本は遅れている、乗り遅れるな」などの議論が沸騰した。
経済には全く知識がない私は今回勉強のつもりで参加した。私は、戦後教育の中で、エネルギーや資源が少ない日本は、輸入によって資源を確保し、技術革新により生産性を上げ、工業製品等を輸出することで外貨を稼ぎ、高度成長を遂げたという教育を受けた。
事実、身の回りには、テレビ、パソコン、携帯電話など便利な道具があふれ、朝から夜遅くまで食事がとれるファストフードが地方にまで進出し、確かに経済面では豊かになった様な気がする。しかし一方においては、少子高齢化、農業担い手の不足、コミュニティの崩壊などお金では買えない大切ななものを失いつつある。
講演では、TPPが行われれば、金融、保険、医療など広範囲にわたる貿易自由化が行われるとのこと。農業生産分野がGDPに占める割合は1.5%であっても、農業がそこに展開されることで、いろいろな産業が成り立ち、商店街が成り立ち、自然も守られ、コミュニティが成り立っているというのが地域社会の現実ですと強調された。
戦後の高度成長は、都市圏に生産システムを集中させ、若い労働力を地方から集中させ高度経済成長を成し遂げた。現在GDPは辛うじて横ばいを見せているが個人の所得は年々減少を続けている。これからは地方が地域にある資源や人材を活用して、経済的にも精神的にも豊かにならなければならない。
そのための準備をしないでTPPに参加すれば、戦後日本が歩んできた道をもう一度歩き始め二度と引き返せないことになりはしないかと危惧した。
今、クールジャパンという言葉が良く聞かれるようになった。日本の伝統文化、食、暮らし方を、外国の人がかっこい(クール)と考えることからクールジャパンカッコイイ日本と言うようである。それは日本人があこがれた都市の暮らしではなく、地方の伝承文化、自然、伝統的な祭りをカッコイイと感じるようである。
天草にも地域の資源、人の力、伝統的技法を生かした商品づくりを行っている中小企業がある。その一つ天草市瀬戸町にあるイソップ製菓を訪れた。
社長の菅原さんは先輩であるが、快く会社の中の企業秘密(笑)を見せて下さった。「赤マキ」「ロールケーキ」が職人さんの手作りで作られていた。無機質な機械的な作業イメージを想像していただけに感動を覚えた。
先輩いわく「逆転の発想が功を奏した。機械を入れるには経費がかかる。経費を抑えるために職人の技術を継承した。今の時代は手作りがキーワード」とのこと。
職人さんの包丁さばきは日本人の私がカッコ良いと思った。きっと外国の人も「クール」と感じるに違いない。もっと地域に残る伝承技術を残していかなければならない地方から日本を変える気持ちを持ち続けることがこれまで以上に求められている。
イソップ製菓ホームページ http://isoppu.co.jp/