【深海の牛(馬)追いばやし】
深海の牛を追う時の囃しは、全部が薩摩系のものである。深海は明治初年まで百姓家では使役として地形に合致した「牛」を使用せず、薩摩系の「馬」を使用した。深海への移民の際も恐らく「馬」と共に来たのであろう。薩摩で「囃した」そのままで、 囃し唄が残っている。 |
一、 | よか時生まれた 山田の新田ホイ(一むち入れて) 新田煙草の 虫捕る間がない 可愛いおご女の 袖引く間もない |
| | ヨイサヨイサ |
二、 | ドッコイ堂崎キャ粟所サア 粟ん中きゃころだりゃ犬が吠えた 犬どんが吠えても仕事はして来い |
| | ヨイサヨイサ |
三、 | 想い出しゃせんかのい 泣きゃせんかのい 時々きゃ想い出して泣くばかり |
| | ヨイサヨイサ |
一、と二、は南鹿児島の町の地名であり、三、は移民した人の望郷の詞である。さいごは、「ヨイサヨイサ」と追う。 平和な農村の恋歌を唄い続けたものであり、下平の「トンゴン迫」一帯に杵の音がこだましたであろう。平和なこの村には、しばしば「天然痘」が流行した。「天然痘」にかかればすぐ「馬刀島」へ隔離されるのである。 |