どんくタイトル
2-10肥後国深海村市左衛門旧離帳外之伺書
   私 御 代 官 所
 肥後国天草郡深海村
  平内 伜
市左衛門
  当巳三十六才
 市左衛門は、昨年の十一月に家出をいたしておりまして、 あちこちと近村の人達にたずね探しておりますが、なかなかさがしだすことができず、依然として行方不明であります。彼は、以前から人柄がよくなく、農業を殊の外嫌い、大酒呑みで、どうしようもなく、親類・組合・村役の人たちからも度々忠告を致しておりましたけれども、一向に耳をかさず家出致してしまいました。
 行き先ざきにおいて大変な悪い事をしでかし、村の方々へご迷惑をおかけするのではないかと、案じております。そこで、この度、旧離帳はずしにしたいことを、父平内を始め、親類・組合・村役人一同連印を以って願い出候間、取り調べました処、世間の風説と相違無く候に付、願いの通り旧離帳外を申し付度存じ奉り候。
 依ってこれを伺い奉り候。   以上。
  文政四巳年二月
  高 木 作 右 衛 門 印
 間 宮 筑 前 守 殿
   御 附 紙
 書面伺の通り帳外すべく申し渡され候。
附記
旧離帳外(はずし) とは、江戸時代下級武士・町人・百姓が永久に連帯責任を免れるため、目下の親類との縁を切り、役所に届けて、人別帳より外したこと。