市左衛門は、昨年の十一月に家出をいたしておりまして、 あちこちと近村の人達にたずね探しておりますが、なかなかさがしだすことができず、依然として行方不明であります。彼は、以前から人柄がよくなく、農業を殊の外嫌い、大酒呑みで、どうしようもなく、親類・組合・村役の人たちからも度々忠告を致しておりましたけれども、一向に耳をかさず家出致してしまいました。 行き先ざきにおいて大変な悪い事をしでかし、村の方々へご迷惑をおかけするのではないかと、案じております。そこで、この度、旧離帳はずしにしたいことを、父平内を始め、親類・組合・村役人一同連印を以って願い出候間、取り調べました処、世間の風説と相違無く候に付、願いの通り旧離帳外を申し付度存じ奉り候。 依ってこれを伺い奉り候。 以上。 文政四巳年二月 |