天草市河浦町富津は天草下島の南西部、東シナ海に開口する羊角湾北岸に位置しています。羊角湾には海食輪廻による小湾が数多く形成され、羊角湾最奥の懐の深い湾の入り口にあたるのが﨑津・今富です。入り江に面する﨑津は、金比羅山と海に接する狭隘な土地に集落を形成し、入り江の最奥にあたる今富は、今富川の2つの支流と、後背山に囲まれた迫地形に集落が点在しています。 富津は明治29年、﨑津村・今富村の合併により誕生しました。古来より、﨑津・今富は「﨑津浦」という一体の景観として捉えられており、漁村の﨑津と農・山村の今富は、補完しあいながら生活を営んでいます。 当地区では平成19年より文化的景観選定に向け調査を開始し、平成23年2月には「天草市﨑津の漁村景観」が、平成24年9月には今富を選定範囲に加え名称変更を行い、国選定の「天草市﨑津・今富の文化的景観」が誕生しました。
天草市は平成24年6月に、「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産として選ばれました。「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」のストーリーの価値は、16世紀中頃の西洋文化とキリスト教の「伝来」、 全国での「繁栄」、17世紀の禁教令と「弾圧」、ひそかに信仰を続けた「潜伏」期、そして19世紀の開国とともにキリスト教が解禁と「復活」により西洋と日本の伝統・文化が融合した教会の建立です。 その中でも、「天草の﨑津集落」は、「ひそかに信仰を続けた潜伏」が高い評価を受け「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の構成資産に選ばれ、特に顕著な価値を示す「﨑津諏訪神社」、「﨑津教会」、「両者をつなぐ道」、「道に面した家屋」を「天草の﨑津集落」のコアゾーンに設定し、旧﨑津村の範囲を、コアゾーンを守る緩衝地帯としています。 |