これまでも、たぶんこれからも日本人の都市部での「通勤」は電車の上での読書の時間だったり一日のスケジュールの復唱の時間。しかし地方在住者のクルマによる通勤は裏道や農道を好きな音楽をBGMにアクセルを踏み込み、エキゾーストノートを甲高く響かせてコーナーリングGを楽しむ至福の時間でした。

日本の道路は曲がりくねっていてリズミカルに走るのが難しく、ゆえにスポーツカーにとって最良の舞台です。それはまた景色が変化に富んでいるということでもあり、短時間に次々と周辺環境の移り変わるさまが映画のワンシーンを駆け抜けているような錯覚をも覚えさせます。つまり日本は本来、スポーツカー天国なのです。

それが充電制御装置などのエコなデバイスで音楽の愉しみが奪われ、低燃費一辺倒のクルマづくりによって走りのエキサイトメントを知る機会も激減。スポーツカーのある暮らしの温もりと豊かな時間の過ごし方を知る人は絶滅危惧種かも知れません。日本人のQOLの著しい低下の一因でもありましょう。

通勤という本来なら時間的拘束の始まりをエンターテイメントに変えてくれた数々のスポーツモデルが消え去り、長期休暇を余裕をもって楽しめる一部の富裕層向けの高級スポーツカーだけが存続するという「格差」大の現代日本のモータリゼーション。若者がスポーツカーに興味を示さない国情は諸外国からも奇異に見られてます。

そんな日本にようやくスポーツカーの復権の狼煙が上がり始めました。自動車メーカーの、それも開発部門にある者は、スポーツカー大好きなんです。スポーツカーを作りたいからクルマ屋やってるってもんです。やがて再登場するであろう新型RX-7にも期待を込めてスポーツカー天国ニッポンの復活を願いたいものです。

この文面読んで
「しょせんはスポーツカーなんて危険なもの、燃料を浪費するだけのお荷物じゃないか」
とお考えの方はエコカーがほんとにエコだと思い込まされている方でしょう。そういう方こそぜひスポーツカーを体験して頂きたいと思います。ヨーロッパのようにスポーツカーが文化と呼べる水準に達する前にその低迷期を迎えてしまった日本では人々の価値観にその本質が認識されずに現在にいたるのが残念です。単に楔型のスタイルのクルマばかりでなく、また単にスピードを楽しむのでなく、スポーツカーという概念の意味する範疇は人生という名の旅をも変えるものです。その豊かさは直にハンドルを握って走らせてみるしか理解する道はありません。




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