昔ながらの素朴な人間関係が残っており、温厚な人が多い土地柄の枦宇土地区。今回は、そんな枦宇土地区の名所をご紹介します。
【徳本屋のツバメの巣群】
5月、宇津木地区にある徳本屋(昔の地区の庄屋さん)の正面玄関から入ると、内庭の天井にツバメの巣が張り付き子育ての真最中でした。民家の軒先にある一個の巣はよく見かけますが、こんなに一棟の家に群れをなすことは珍しく、家主のツバメを大事にする心遣いが伺えます。巣の下方には、新聞紙が一面に敷かれ、糞の塊が巣の数と一致して、ユーモラスな光景となっています。ツバメを大事にする家風は先代のおばあちゃんからの慣わしで、飼っている猫にいつも「ツバメに害をしなさんな」と言っていたそうです。そのためか、猫も玄関から中には入らないで巣を避けて通っている、と教えていただきました。巣立ちが待たれますが、もし徳本屋の前の電線に多数のツバメが止まっているのを見かけたら、そのツバメは雛が無事巣立ったと思って眺めて下さい。

【母なる木】
海老宇土地区で不思議な樹形の大木を見つけました。直径1メートル20センチ、幹周り3メートル50センチ、樹齢は優に200年を超える杉で、途中から無数の細い枝が天に向かって伸びています。地元の方に聞くと、「優良材になる杉を厳選し、挿し木用とした親木」と教えていただきました。海老宇土地区は、昭和30年代から植林ブームに乗り、苗木提供の一大産地として知られた土地柄です。当時、苗木はトラックの荷台に積載され市場へと運ばれ、また、庭先販売も多く、臨時収入のお金は即食卓のおかずの糧と成ったとお聞きしました。時代は変わり、今日、苗木を育てる農家はわずかとなり、植林された木は伐採適齢期を迎え次々と伐採されていますが、時代を伝える証(あかし)として後世に残しておきたい「母なる木」です。

【ひまわりの中のアート】
大地地区では、国道266号沿いの田んぼ一面にひまわりが咲きます。大地集落協定の活動の一環で、「景観作物」として毎年9月にひまわりの作付けが行われており、写真愛好家の皆さんが撮影に訪れる場所として定着するようになりました。そこで登場したのが「ひまわりの中のアート」です。ひまわりの中に丸太を彫った木彫りの作品が展示され、発芽から花の満開が過ぎるまで花の成長と併せ時々の表情を写真に収めることが出来ます。背面には帽子岳がそびえ、山の色とひまわりの黄色のコントラストが、しばし時間を忘れさせ「癒し」を与えてくれます。10月~11月下旬が見ごろですので、ぜひ、癒されにお越しください。
