キーワード:肝炎 解除

 B型肝炎ウイルスが発見されたのは1973年のことですが、注射針を使い回したり、注射針を取り替えても、筒を換えないまま回し打ちをしたりすると、肝炎が蔓延することは戦前から知られていました。このような「血清肝炎」を防止するために、一般の医療機関においては、一人ずつ注射針・筒を換え、洗浄の上15分以上煮沸するなどの消毒がなされていました。厚生省も、このことを十分に認識していたにもかかわらず、費用やわずかな手間を惜しんで、1988年ころまで回し打ちを黙認し続けてきました。

 平成元年に北海道に住む5人の原告は、肝炎に感染させる危険性を認識しながらあえて予防接種の回しうちを行ってきた国のずさんな公衆衛生行政の違法性を訴え、平成18年に最高裁判決では国の責任を認めました。

 最高裁判決は、予防接種と、原告らの感染との因果関係を、緩やかな基準で肯定しました。B型肝炎においては、免疫機能が不十分な乳幼児期(6歳まで)に感染しない限り慢性化しないという知見を前提とし、その有力な感染原因としては、①キャリアの母親からの分娩の際の母子感染、②集団予防接種における回しうち、③輸血しかないことから、①と③が否定できれば、国の責任が問えるというものです。

 この判決は、国に対し、B型肝炎患者の被害回復のための措置をとることを強く求める内容でした。この基準に従えば、全国にいる約130万人の慢性B型肝炎患者・キャリアの方々の半数近くが、集団予防接種の際の回しうちの被害者だと考えられるからです。

 しかし、国はその原告5人の個別救済を認めたものにすぎないとして被害者全体の救済を拒絶しました。

 現在、患者ら420人が6千万~1500万円の損害賠償を請求し、10地裁で係争中の裁判ではまだ判決が出ていません。国は因果関係が不明などとして全面的に争ってきましたが、札幌、福岡両地裁が今年3月に和解を勧告、大阪地裁も4月、和解による解決を促し、原告側も和解による訴訟の早期終結を望む意向を示しています。

 鳩山由紀夫首相と仙谷由人国家戦略担当相ら関係閣僚は5月9日、札幌、福岡両地裁が出した和解勧告を受け入れ、和解協議に応じる方針を決めました。ただ、救済対象の範囲や賠償額に原告側の主張と大きな隔たりがあり、閣僚らで引き続き検討を重ねる予定だそうです。


 さて、ここからが本題です。B型肝炎のスクリーニング検査で、HBs抗原が陰性の場合、HBs抗体とHBc抗体を検査し、陽性であればHBV-DNA定量検査を行うことになります。この、HBs抗体やHBc抗体を検査を行うと、保険者から保険点数が切られてしまいます。つまり、検査費用が病院側の負担になるわけです。何回か検査をして切られ続ければ、病院は検査を行わなくなります。しかしながら、このHBs抗原が陰性でHBs抗体が陽性の患者に化学療法や免疫抑制剤などを使うと、HBVが再活性化する可能性があります。また、肝細胞癌の原因にもなります。

 このため、スクリーニングでHBs抗体やHBc抗体の検査は必要なのですが・・・。現在、保険上認められない検査としていることと、B型肝炎訴訟での国の方針には一貫性がありますよね・・・。


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