2012年2月26日

『銀天街物語』第十一話

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リョウスケ☆ありえない推理☆

文と絵 ☆K(ケイ)

とにかく あの時のユウコとアサカの二人ときたら・・・

どう考えても 挙動不審だったよなあ~~ 

俺だけを先に店に入らせておいて 自分たちはどういう

わけだか に入ってこようとしなかったんだ

                リョウスケ 

後でわかったことだけど 俺が店の中に入ってすぐに  

コウジさんの存在に気づいたかどうか つまり 俺の目に

そこにいるコウジさんの姿が見えたかどうかを知りたくて

タイミングを計っていたんだよな~~   

う~~ん、結論から言うと・・・ 店に入ってすぐには 俺にも

コウジさんの姿は見えなかったんだけどさ~~

俺が店に入った時 そこにいたのは ユウコのお母さんの

ユキエさんだけだった・・・

彼女に挨拶していたら 物置になっている店の奥のドアが開く

がして そっちのほうに目をやると 片手に電球を持って

出てきた背の高い男の人が・・・ それが コウジさんだった

ユキエさんから頼まれて 物置の棚の高いところにある予備の

電球をとりにいってたそうで・・・

手馴れた手つきで カウンターの上の証明器具の電球を取り

替えているコウジさんを ようやく店内に入ってきたユウコと

アサカが なんとも怪訝な表情で見つめていたっけ・・・

でもその後は 皆でユキエさんお手製のプリンを食べながら

とりとめのないことで 二、三十分おしゃべりして・・・

コウジさんは 居候先のフルカワさんていうお爺ちゃんから

夕食の材料の買出しを頼まれたとかで 先に店を出てった

だけど・・・ コウジさんがいなくなったとたんに アサカは 俺に

いきなり 核心に迫る質問をしてきたんだ

「 ねえねえ リョウスケくんがお店に入った時 おばさんの姿

しか見えなかったでしょ!? ねっ! ねっ! 」

「 ・・・ ああ 最初はね・・・ でも それって コウジさんは その時

たまたま物置の部屋の中にいたからであって・・・ 」

とにかく アサカの奴 ヘンなこと言うんだよなあ~~ 

彼女が店内に入ってきた時には すぐそこに居るコウジさんの

存在に 全く気づかなかったって ・・・

コウジさんの姿が 彼女の目には映っていなかったって・・・

イケメンには スゲ~目敏いアサカが 背が高くて 男の俺の目

から見てもハンサムなコウジさんに ユウコに促がされるまで

気づかなかったってのも たしかに妙な話ではあるんだけどさ

だから この俺に 先入観無しに店の中に入るよう仕向けて

コウジさんの姿が 俺の目にも見えるかどうか 人体実験して

みたんだってさ   なんか・・・ 女子って コワイよなあ~~

でもまあ せっかくの実験の結果も ビミョ~なとこだよね

コウジさんが その場にいたかどうかっていわれてもなあ~ 

彼は 店の奥のドアを開けて出てきたんだもの・・・

そしたら アサカが言うには まずドアの開く音で俺を注目させ

といて 本人が登場したに違いない・・・ だってさあ~~

コウジさん まるで 幽霊か妖怪扱い!(笑)

あれからコウジさん 夕食の材料を買いに行ったんだぜ~~

人目を気にせずに ちゃんと買い物も出来るってことだろう?

どこからどうみても 普通の人間にしか見えないってば~~ 

俺からすりゃ たいしたことでもない事に アサカの奴 何で

こんなにこだわるんだろう? 

ユウコだって 熊本交通センターから始発の本渡行きバスに

乗ったコウジさんが 俺たちが登校する時間帯に 祇園橋に

いられるわけがないって 真相を突き止めようとしてたもんな

女の子に野宿したって言うのが恥ずかしいからって 

コウジさんがいいかげんな嘘をつくからいけないんだけど

まあそれほど アサカとユウコの二人にとっては 気になる

存在ってことかな? コウジさんって・・・

俺なんかとほとんど口もきかないアサカが 今回ばかりは

「 リョウスケくんだったら どう思う? 」 

「 リョウスケくんだったら どうする? 」

いつもは リョウスケって呼び捨てなのにさ~(苦笑)

今思えば ポルトで「リョウスケく~ん」なんて 俺に声をかけて

きた時から アサカの奴 俺を利用して人体実験させるつもり

だったんだよなあ~~   ほんと 女子って 油断ならねえ~~ 

だけどさ 俺の考えを神妙に聞いているアサカって・・・

いつもの鼻っ柱の強い彼女とは違って スッゲエ~カワイク

見えるから 不思議だよな・・・エヘッ!

なんだか 女子から頼りにされてるこの感じ 悪くはねえなあ~

ほんと 男子って 単純な生き物だよな~(笑)

だけどさ こういう場合 どう説明すりゃあ彼女たちも納得

するのかなあ~?

そういえば ・・・ 俺 SF小説とかけっこう読んでるんだけど

以前何かの小説の中に こういったシチュエーションがあった

ような記憶が・・・ その人物を必要とする人間の目にだけ

見えて べつに必要としない人間の目には見えない 《一種の

フィルターがかかった人間》が存在するって・・・ そう たしか

そんなふうな内容だったよなあ~~

今回の場合も そんなふうに考えてみたら面白いかもな~~ 

でも・・・ この理論を証明するには ユウコたちが コウジさんと

最初に出会った時 はたして 彼の存在を どうしても必要として

いたかどうかってことだけど ・・・

「 あなたたち コウジさんの何噂してんの~?」

洗い物を済ませたユキエさんが 興味津々の様子で 俺たちの

話の輪に加わったんで 彼女に コウジさんと出会った時の状況を

詳しく聞いてみたんだ・・・

その日 ユキエさんは スーパーの野菜の詰め放題で パンパンに

重たくなったスーパーのレジ袋を提げて 数百メートルの距離を

歩いて店に戻ろうとしていたんだけど 途中で ビニール袋の

とってが 指に食い込んで ・・・

ほんと女の人って 何でも詰め放題になると 異常なまでに執念を

燃やすからねえ~   俺の母ちゃんも そうだけどさ(笑)  

で、筋肉隆々の男の人なら こんなもの ヒョイッと指一本で

持ち上げられるな~なんてことをチラッと思った瞬間 スッとその

重たい袋が軽くなって ・・・ ユキエさんの背後から コウジさんが

買い物袋を持ってくれたんだっていうことだけど

もっとも ユキエさんが想像した筋肉隆々の男の人とは違って

コウジさんって 細身のタイプだけどね(笑)

で、次に フルカワ老人の場合はというと ・・・ 彼にとっては

コウジさんって とても必要な存在だったんだよな~

だって 店の入り口で フルカワさんが倒れ込んだ時 コウジさんが

身を挺して 彼を助けたそうだから・・・

コウジさんのとっさの行動がなかったら フルカワさんは 打ち所が

悪くて大変な事になってたかもしれないって ユウコとユキエさんが

言ってるから 間違いない・・・ おまけにコウジさん 今は 独居老人の

フルカワさんにとっては いい話し相手になってるみたいだし ・・・

そういった意味では コウジさんをいちばん必要としてるのは

フルカワさんだったりして・・・

でも フルカワさんが 《キッチンHIRO》の店内に入った瞬間

一番奥のテーブルにいたコウジさんの姿が目に入ったかと

いうと それは無理な話だよなあ~~

なにしろフルカワさん 熱射病で朦朧とした状態で 店の入り口に

立ってたそうだからね

さて 俺のこの突拍子もない推理が 仮に正しいとして・・・ まあ

そんなことは 現実的には絶対ありえないとは思うんだけどさ~  

ユウコの場合は・・・  ユウコがコウジさんと初めて出会ったのは

俺たちが遅刻しそうになったあの朝だったよな・・・  

俺は あの時 コウジさんの姿を確認できなかったんだけど・・・

ユウコには あの朝 彼をどうしても必要とするようなことでも

・・・ あったのかな・・・!?

*おことわり*

地元小説の性格上 実在の地名・学校名・施設名などが

登場しますが これは あくまでフィクション小説です