第二十一回 「オニのトシゾーの失恋」（後編）
Ｗｅｂの駅見守り隊 探索方の ヤマザキです！
え？ お前 いったい誰だ！ですって～？ ・・・ だから
タ・ン・サ・ク・カ・タ の ヤ・マ・ザ・キ ですっ！
聞いたことのない名前だな～ って 思ってるんでしょ～
そりゃそうですよ～ 今回が初登場なんですから ・・・
これまで 私の出番がなかったということは それだけ
この屯所が 平和だったって証拠ですよ
探索方っていう職業柄 私 あまり顔を出したくないんですよね
では、そろそろ本題に入りましょうかね～
副長の恋が実らなかったワケを 私の口から 説明させよう
としてるんでしょ ソージさん ズルイな～！！！
何故か 相手の女性からの連絡が まったく途絶えてしまって
副長も 何度か手紙を出したんですが 無しのツブテで ・・・
今でいう 着信拒否の状況ですな～～～
元はといえば 副長 あなたが悪いんでしょうが！
それでも 彼女の様子が どうしても気になる副長は 私に
彼女の身辺調査を依頼したんですよね
おもいっきり私的な頼みごとですが 上司には逆らえないしな～
で、ある日 彼女の家の前で張り込んでたら 当の本人が
なんだか ウキウキした様子で 門から出てきたんです
当然 彼女の後をつけましたよ、気づかれぬように ・・・
家のすぐ近くの川岸 もう葉桜になってしまった桜の木の下に
・・・ ん？ 男性の姿が！？ 誰だ～？
商家の若旦那風の男が 彼女に向かって手招きしている ・・・
彼女が近づくと 男は着ていた羽織を脱ぎ 桜の木の根元に
敷いて 彼女を その上に座らせたんです ・・・
（ この時点で 副長 かなり負けてます！ ）
彼女のほうはといえば 小風呂敷に包んできた漆塗りの
弁当箱の蓋を ソッと開けて 相手の男に差し出す ・・・
アレ～？ これって 副長とのデート もとい 逢瀬の時と まるきし
同じ状況ですな～！
「 満開の桜の下で ヒジカタさんとデートして それから間もなく
葉桜の下で 別の男とデートするなんて・・・ ずいぶん
気持ちの切り替えが はやいんですね 女の人って！」
そう言ってブータレてるソージさん あんたは まだ若いから
ムリもないが オンナのホント～の怖さを まだまだワカッテ
ないね～
「 いや～ なんて美味しそうな卵焼きでっしゃろ！
このくらい砂糖がきいてないと 卵焼きらしゅうおまへん！
あらら～ オシンコはんも お手手つないで 仲がよろしいな 」
遠目から見ても スッゴク不出来きだと判別できる弁当ですよ！
つながったタクワンまでも擬人化してしまう コノ会話の巧みさ！
（ 残念ながら 副長 またまた アナタの負けです！ ）
すると突然 「キャ～ッ！」と 彼女の絹を裂くような叫び声！
「 ホラ、ジッとしとき！ 今 とってあげるさかいに ・・・
人の恋路を邪魔して ほんに無粋な毛虫はんやな～ 」
そう言いながら 男は 彼女の襟足を這っている毛虫を 器用に
箸でつまんで 川面に ポイッと 放り投げたんです～～！
葉桜に毛虫はツキモノ！ この男 こうなるって予測してたに
違いないです！ この確信犯っ！！！
その男のやり口に こっちの背中までムズムズしちゃって
私 もうそれ以上 その場にいられませんでした 退散！退散！
その後の周囲への聞き込みの結果 意外な事実が判明しました
そのキザな男は 彼女と幼なじみで 親同士が決めた婚約者
だったんですよね ・・・
なんで 関西弁をしゃべっているのかというと 何年間も 大阪で
商売の修行をしていたため 関西弁が抜けきらないようで ・・・
ハンナリ・モッタリ ・・・ 確かに 女性の耳には心地よいかも
彼女としては 親の言うなりに結婚するのに 何となく抵抗が
あったみたいで 副長と出会って チョッピリ心が揺れたようです
（ イケメンぶりは 副長 アナタの圧勝です！ ）
結局 彼女は 同時期に 二人の男性とお付き合いしていた
ワケです！ 世間では これを俗に フタマタヲカケルといいます
でも結局は 上から目線の副長より 優しくて手堅い商売を
している イイナズケのほうを 彼女は選んじゃったんですよね
一生のこととなると 所詮女の人は 平穏・安定を求めがちです
イケメンかどうかは さほど 重要視しないのかな？？？
ならば 婚活中のシミジミ・ケースケさんの前途にも 光明あり？
私が知りえた情報を 包み隠さず全て報告すると ソージさんは
彼女が フタマタヲカケテイタことに 落胆・憤慨した様子 ・・・
しかし 副長のほうは 顔色ひとつ変えず 平然とした態度！
さすが 大人です！ これしきのことでは メゲません！
と、思っていたんですが ・・・ ほんとは精神的に かなり打撃を
受けたようで これ以後 副長に 明らかな三つの変化が ・・・
一つ！ 突然 独身主義者に （よほどの女性不信になったか？）
二つ！ 食事中いっさい無言に （料理の批評が事の発端なので）
三つ！ 関西弁に嫌悪感 （相手の男が たまたま関西弁というだけ）
いわゆる トラウマってものが 三つもできちゃって ・・・
副長って ・・・ 以外に ナイーブな もとい 純粋で傷つきやすい
性格なんですね ～ 私 ・・・ この件で 初めて知りました！
さて 次回は 副長が関西弁を嫌う理由を ソージくんから
聞き出したケースケさん どんな反応をするんでしょうね ～