2012年3月29日

『銀天街物語』第十六話

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ユキエ☆人生の決断☆

文と絵☆K(ケイ)

我が家は まさに 突然の春の嵐 !!!

せっかく決まっていた立派な就職口を棒に振るなんて!

・・・って 両親は大激怒!

でも 将来家業を継ぐ兄だけは 内心 喜んでいたみたいで・・・

私の家は 三代続いた長崎カステラの製造販売店なんですが

今の若い人たちには カステラよりも 生クリームをたっぷり使った

ケーキのほうが人気があるようで どうもこのところ 店の毎月の

売り上げも 横這い状態が続いていたらしく・・・

兄の提案で 若い人たちにもオシャレな感覚でカステラを食べて

もらえる喫茶コーナーを造ることになり ちょうどその時 店の一部を

改装していたんです

オープン予定の四月までには スタッフを一人 急募しなくちゃ

いけないんだけど・・・ 人件費とかなんとかを考えると

兄も いろいろと頭の痛いことだったようです

ところが 四月から家を出るはずだった妹が なんだか家に居座る

みたいだし(笑) これは兄としても好都合なわけで それで

兄と妹は ガッチリとタッグを組みました!

幸いにも オープンしたその喫茶コーナーは 私たちが想像した

以上に盛況で 私が卒業した女子短大の同級生や後輩の女の子

たちも ティータイムやデートの際に よく利用してくれて ・・・

エミやケイコも 仕事が休みの日など たびたび立ち寄ってくれたし

ケイコなんか グルメ通のエミが考案してくれたカステラ・パフェを

パクつきながら 私が東京行きを中止したワケを 何度も シツコク

訊ねるんだけど ほんとうの理由は さすがに言えず・・・

でもどうやら 勘の鋭いエミのほうは なんとな~く察しがついて

いたみたいですけどね(笑)

家の仕事を しっかり手伝っている私のことを そのうち両親のほうも

認めてくれるようになり 毎月一定額の給料をもらえるようになった

んですよ・・・ だって もうその頃は エプロン姿もかわいい(笑)

私のことが 街の情報誌に載ったり ケーブルテレビが取材にきたり

して 自分で言うのも何だけど ちょっとした街の人気者でした(笑)

で、お見合いの話も チラホラ 舞い込むようになり ・・・ でも 私の

人生の目的は そんなもんじゃなかったし・・・

お店の店休日には ちょくちょく 天草に日帰り旅行をするように

なった私を 両親も さすがに変に思うようになって・・・

「 オマエ 天草に 好きな人でもいるんじゃないか?

だったら私たちにも ちゃんと紹介しなさい 」と言いはじめました

たしかに私が大好きな人は いるんだけど 相手のほうは たぶん

・・・ 私のことは 単に お客のひとりとしか思っていないんじゃ

ないかと・・・あの夜 「 今 つきあってる人は いますか?」って

ケイコが不躾な質問した時にも 彼は笑いながら・・・

「 このお店をオープンするのに必死で とてもそんな余裕なんか

なかったし これからだって 当分無さそうだな  」

なんて言ってたけど 本当かなあ~~   

東京で働いているはずの私が たびたび 天草に遊びに来ては

彼の店に立ち寄るので 彼も ちょっと驚いてはいたようだけど

何故 東京に行かなかったのかなんて 尋ねることはなかったし

それってつまり 私のことに それほど関心が無いってこと

でしょうね・・・ きっと・・・ 

それでも それでも私の一生分に必要な勇気を この場で使い 

果たしてしまうほどの それほどの勇気をふりしぼって ある日 

彼に告白したんです!

「 私 あなたのことが 好きです!」 ・・・ って!!!

そしたら 彼 すごく 戸惑った表情で ・・・ 暫くの間  何か考えてた

ようだけど 決心したように 私の目を まっすぐ見つめて

こう言ったの!

「 君の気持ちは とっても 嬉しいんだけど ・・・

でも 僕は 君とは・・・ 付き合えない 」

それは 私に返事を伝えているというよりは むしろ 自分に・・・

彼自身に 言い聞かせているような・・・

ヒロシとユキエ 

その時の私には そんなふうに感じられたの!!! 

*おことわり*

地元小説の性格上 実在の地名・学校名・施設名などが

登場しますが これは あくまでフィクション小説です