『銀天街物語』第十三話
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アサカ☆父への想い☆
文と絵 ☆K(ケイ)
そうか~ ・・・ あれから ・・・ もう十二年も経つのか~ ・・・
あの頃 私とユウコは ・・・ もちろんリョウスケも まだ五才で・・・
いつも三人で一緒に 幼稚園に通っていたっけ・・・
親たちはそれぞれ お店の開店準備で忙かったんだけど
私のママと ユウコとリョウスケのお母さんが 代わりばんこに
幼稚園まで付き添ってくれてたんだった ・・・
幼稚園と そのちょっと先にある高校は 当然 通学路が同じで
高校生のお兄さんやお姉さんたちが チョコチョコ歩いている
おチビさんの私たちを 背後から早足で スイスイと追い抜いて
いくんだけど ・・・ 当時の私たちの目には 彼らが スゴ~ク大人
っぽく映ってたのよねえ~~
今の私たちも 幼稚園のちびっ子たちからは もういっぱしの大人に
見えてるんだろうなあ~~
ユウコのお母さんが都合の悪い時は 代わりに彼女のお父さんの
ヒロシパパが 私たちを幼稚園まで送り届けてくれるんだけど
そんな時のユウコって なんだか得意げっていうか ・・・ パパの手を
幼稚園に着くまで ず~っと握りしめて離さないのよね
( 見て見て これがユウコのパパよ!)って パパ自慢ビームを
あちこちに放出しまくってる感じだった(笑)
まあ確かに ユウコのパパは カッコよかったけどねえ~~
私たちとすれ違う女子高校生たちも ヒロシパパのこと チラ見
してたくらいだもん・・・ だから ママの代わりに ウチのパパが
送り迎えしてくれる時は 私悪いけど パパとは手を繋がなかった
だって・・・ 若くて背が高くて 引き締まった筋肉質のユウコのパパ
とは対照的に うちのパパって 背が低くて 中年太りで おまけに
髪の毛も その当時から寂しくなりはじめてて ・・・
だから 私 よくパパに言ってたっけ
「 ユウコちゃんのパパみたいに カッコよくなって!」 って・・・
ほんと 子供って 残酷なことをストレートに言っちゃうのよね(笑)
でも ・・・ 十二年前のあの時から そのセリフは 永遠にタブーに
なってしまったけど・・・
あの事故の後で 私 パパから言われちゃったの ・・・
「 俺は ヒロシみたいに 見かけはカッコよくないけど でもな
奴のように 突然 オマエの前から いなくなったりはしないからな!
四十過ぎて やっと授かった子宝だもんなあ~~
オマエの結婚式で いっしょにバージンロードを歩くまでは
ゼッタイに ゼッタイに 元気でいるからな! 」 だって ・・・
そうだよね ・・・ 両親が元気でいてくれるだけでも 感謝しなくちゃ
パパ ごめん! ほんとは 私にとって すごく自慢のパパなんだよ!
いっしょに バージンロードを歩こうねっ!
でも ちょっと想像しただけでも ハイヒール履いている私のほうが
パパより ずっと背が高くなっちゃいそうだけどね
だから お婿さんは 私より背が高い人がいいなあ~~(笑)
十二年前の三月のあの日 ・・・ 天草高校で卒業式があったあの日
ユウコの店『キッチン HIRO』は お店特製の《洋食弁当》を一つ
前日から注文を受けていたの
学校の事務室からの電話で お昼頃に学校まで届けて欲しいと
いうことだった・・・
料理というものは お客さんに 出来立てのものを店内で食べてもらう
というポリシーを持ったヒロシパパなので その《洋食弁当》っていう
のは 『キッチン HIRO』が 唯一出前しているものだったの
お店特製というだけあって かなり豪華な内容で そのぶん値段も
高かったから 高校の先生たちが 職員室で毎日気軽に食べられる
お弁当でもなかったので 高校からの注文依頼も 月に一度 あるか
ないかだったみたい ・・・ それに その豪華なお弁当は たいてい
応接室で VIP待遇のお客様のお腹に入っていたという噂が(笑)
私の高校もそうなんだけど いくら公務員とはいえ 先生方の
一日のお小遣いも けっこうキビシイものがあって(笑) 大抵は
愛妻弁当か 高校に出入りしているお弁当屋さんの五百円程度の
日替わり弁当が 昼食の定番だったのよね
私たちも その頃は この世で一番美味しい料理は オムライスや
お子様ランチだと思い込んでいたし・・・ いや 思い込まされていた
のかなあ~~(笑)
私たちが大人になって その《洋食弁当》を たまには食べることが
できるくらいのお給料をもらうようになったとしても それと同じ
お弁当を食べる機会は もう永遠にないんだけれど・・・
そのお弁当を 高校までバイクで配達にいった帰り道 ユウコの
お父さん・・・ヒロシパパは ・・・
私のパパが 当時は 毎日のように言ってたことだけど ・・・
今でも時折 思い出しては 言うのよね ~~~
「 バイクに乗る時は いつも ものすごく慎重だったヒロシが ・・・
通いなれた道で どうして あんな事故を起こしたんだ ・・・
あの時いったい 奴の身に 何が起きたんだ ・・・!?」
*おことわり*
地元小説の性格上 実在の地名・学校名・施設名などが
登場しますが これは あくまでフィクション小説です