小さな事故であれば、計器室にいるオペレーターは、自動で処理をしてくれるのをその進捗が正常になされて いるかどうかといったことをたくさんの計装機器を監視しながら、追っかけていればよいといった感じであろう。 通常運転の範囲であれば、DCSくらいの範囲を監視していてもよいであろう。 また、その班で、それぞれのループの担当が決まっているはずなので、担当する箇所を監視しながら、 他のメンバーにもそれらの状況の成り行きについて声を出して連絡を取り合っているだろう。 直長も計装機器を見ながら、全体的に計画通りに進行しているのか、異常はないのか、これから先の処置要 領などを考えているだろう。 ところが、今回のようにブラックアウトになった場合は、バッテリー電源や計空タンクからの操作用空気がある 間に、急いで安全に停止する処置をしなければならない。 今回の場合は、決められていた手順通りの安全な処置ができなくなった。 なかでも格納容器の圧力が上がり始めた場合、容器の爆発を避けるためには、ベントをせざるを得なくなるこ とはオペレーターであれば知ってはいるはずである。 規定圧力にならなければ放出が出来ないように、ラプチャーディスクを挿入されおり、その前弁として、並列に 電動弁と空気作動弁があったようであるが、フェイルセーフの観点から常時開いておくべきか、閉じておくべき かは分からない。放射性物質を吸着する装置が付いていれば、開いておいてもいいのかもしれない。むしろ 開いておく方がよいのかもしれない。 ベントをするには、住民を避難させる必要があるが、避難指示は誰が担当するようになっていたのだろうか。 このような事態の場合、今回枝野官房長官が不安感を与えないようにといったことで、3Km圏内に避難指示 を出したり、その後10Km圏内、20Km圏内と少しづつ広げていった。 20~30km圏内は「屋内退避」を指示したりしているが、「屋内退避」とか「自主避難」ではなく、即刻全員 30~50Km以上待避させることが必要であっただろう。 原発の場合、状況が分からなければ、分からないほどまず広範囲の避難が当たり前である。 分からないのに、政治判断、政治判断だとなんでもかんでもいいたがる現在の政府は、エマージェンシーが 発生した場合は、原発の場合だけでなく非常に危険ではなかろうか。 吉田所長は、その待避の状況をまだかまだかと待避完了の連絡がくるのを待ちながら、オペレーターからの 情報を受け、刻々と変動する状況に対応させ、指示を出し続けていたであろうと思われる。 このような場合、所長といった経験者は、100個くらいのアナログ計器が瞬時に見えるものである。 絶対に見落としてはいけない、瞬時の判断が部下を活かすか殺すかになる。部下だけではない日本が、 世界が自分にかかっている といったようなすごい緊張観の中にいるものである。 いってみれば、このような場合の所長位置づけは、乗客が乗っている飛行機にエマジェンシーが発生した 場合、コックピットで全神経を集中して、一度にたくさんの計器を読みながら、音などを聞き分けながら原因を 発見し、対策を講じようとしている機長と同じであろう。 原発の場合、それ以上かもしれない。 このような場合、現地と官邸に詰めている東電の人と十分な情報が流れないのは当然である。 東電社内にいる社長も詳細を把握するのは困難であろう。 大きな所をつかんで、外部の処置をし、内部でなんとか安全な方向に持って行こうとしているのを支援する のが、当面、落ち着くまでの役割ではないだろうか。 |