高田郁(かおる)の「あきない世傳 金と銀」。2016年に(源流編①)が発行され、今年8月(風待ち編⑪)が出て、物語はまだ終わりません。1730年代、摂津の国、(今の大阪と兵庫県の一部)の貧しい学者の家に生まれた幸(さち)、兄と父が相次いで亡くなり、9才にして大阪天満にある呉服商「五鈴屋」に奉公に出されます。「一生鍋の底を磨いて過ごす」女衆でありながら商いに心惹かれて励み店主となり、⑪巻になってもまだ先がありそうです。絹物、木綿物、お蚕さんから、綿の実から紡いで糸にして織って染めて反物にするまで紆余曲折沢山の人達に助けられ、又、迫害を受けながらも、試練に耐え幸の闘志は留まる様子はありません。五鈴屋は(買うての幸い、売っての幸せ)を貫くために幸の波乱の人生がこれからも思わぬ展開がありそうです。著者は60才過ぎくらい、中央大学法学部を卒業、漫画の原作者でしたが小説家としても2008年にデビュー「みおつくし料理帖」「蓮花の契り」「出世花」など、その他の作品も興味は尽きません。文体は安易で描写が優しく気安く読み進められました。⑫巻の発行が楽しみです。

あきない世傳


2021年11月04日更新