去年の5月、佐藤春夫の「望郷五月歌」で月初めのご挨拶をさせて頂きました。「塵まみれなる街路樹に 哀れなる五月来にけり」で始まる長い長い詩です。高校の授業で聞いて感動して憶えました。詩は東京の描写から一転し、初夏の紀州を朗々と歌い上げます。「空青し山青し 日はかがやかに 南国の五月晴れこそゆたかなれ」ほんとに素晴らしい詩です。今月は松尾芭蕉の5月の俳句「行く春や 鳥啼き 魚の目は泪」を見て頂きたいと思います。松尾芭蕉は46歳の時、東京千住の住まいを旅立ち「奥の細道」へと出立しました。その時、お見送りの人々に見送られ別離の悲しみに泪が止まらない、そしてこの句をこの度の最初の吟としたそうです。芭蕉は西行法師の名跡をたどることを目的に、東北・北陸150日の旅に出たのでした。 
又、芭蕉は後に故郷の伊賀に旅する時も、門人たちは多摩川を渡って、川崎宿迄見送り「麦の穂を たよりにつかむ 別れかな」の句を遺しています。川崎市の駅の近く,旧東海道際の細い道路わきに芭蕉のこの「句碑」があります。ここは実際にこの句を詠んだ場所、八丁畷に建っています。この後、旅の途中大阪で発病して51歳の人生を閉じました。

日新町芭蕉の句碑②
2022年05月01日更新