主人の弟が新大久保の一軒家を整理して、新宿の超高層マンションに移る時、譲り受けた骨董品の中に一本の掛け軸が有りました。「訥郎」のサインがある「八重桜」の日本画です。表装も筥も大変立派な物で、さぞかし名のある人の作品であろう、と思っていました。

平成21年10月7日、ほんしゅうを縦断した台風十八号により、正行寺の境内に高く聳えて毎年私達を楽しませてくれた八重桜の大木が途中から折れてしまい、残された僅かの幹も危険防止のため地面ぎりぎり切り取られました。この時、私は、この「八重桜」の掛け軸を思い出しお寺さんに寄進して、皆さんにも見ていただき、長く保存して頂くようお願いしました。毎年時期になりますと、床の間に掛けて下さり、私も拝見しています。その後、ご住職が調べて下さったところによると、明治36年鹿沼市に生まれた「島田訥郎」の作品であることが分かりました。早稲田大学文学部哲学科を中退、佐藤春夫に詩文を、郷倉千靱に美術を師事し、数々の功績を残し昭和58年85歳で亡くなった、日本画家でした。

今年も色鮮やかな「八重桜」に会えて幸せでした。

 

八重桜

2014年03月22日更新