昼の部で一番は「一谷嫩軍記・熊谷陣屋」です。平家物語素材の熊谷次郎直実の物語。一ノ谷の源平の戦で平清盛の甥にあたる敦盛を打ち取った直実(松本幸四郎)、実は敦盛の命を助けるために同じ年齢(16歳)の我が子小次郎を身代わりにして、義経(染五郎)の首実検に向かいます。事情を察した義経はこれを敦盛である、と認めます。小次郎の母相模(市川猿之助)の嘆き、敦盛の母藤の方の驚愕。世の無常を悟った直実は鎧かぶとを脱ぎ棄て剃髪に墨染の僧衣になって花道を引き揚げるのです。直実が大きな網代傘とお数珠を手にして花道の七三に立ち止っての台詞「16年は一昔、 夢だ、あぁ~、夢だぁ~」と云って静かに揚げ幕に消え去って幕となります。

「一谷嫩軍記」
2017年04月08日更新