桜の季節となりましたので 2017年に掲載したKの妄想劇場

『桜にまつわる物語』を再投稿いたします

6年前に読まれた方は スルーしてくださいませ(笑)


                  *** Kの妄想劇場 ***

                 『桜にまつわる物語』

母が 大腿骨骨折をして退院後 雨の日や風の強い日以外は

毎日のように リハビリを兼ねた散歩につきあっている


とても心配したけど なんとか自力で歩けるまでに回復した母・・・

寝たきりにならなかっただけでも 神様に感謝しなくては


桜1


いつもの散歩道・・・


「 桜 きれかね~~  母ちゃん  」


帰省するのは 盆か正月なので 故郷天草の桜は

もう何年も見たことがなかったな


桜は 毎年変わらず咲くけれど・・・


来年の桜も こうして 母と一緒に見ることができるのだろうか


俺の数歩前を 杖をつきながら ゆっくりゆっくり歩いている母


入院生活が長かったせいか 母の背中が また小さくなったような


そういう自分も あと何回 桜の花を見ることができるのか・・・


「 ごめんね~  アンタ まだ定年前だったとに

母ちゃんの介護のために 天草に帰らんと

いけんごてなって・・・ 悪かて思っとるよ

母ちゃんは 地元の介護施設に入所しても

いっちょん かまわんかったとばい 」


「 そがん気にせんでも よかよ~~ 

どうせ あと二年で定年だったけんね

ちょっとだけ早めに 会社ば退職しただけたい 」


「 ほんとは 定年後も 東京で暮らしたかったとじゃ

ずっと都会暮らしだったアンタには こがん天草んごたる

田舎は 退屈やろもん  」


「 東京は・・・ もうよかよ・・・ 母ちゃん

歳のせいか 年々息苦しいくなっていくような気が

しとったから・・・ もともと 都会生活向きの性格じゃ

なかったとかもしれんね

それよりか 俺のほうこそ ごめんな 母ちゃん

東京で結婚はしたものの 結局は離婚して

子供もできなかったから 母ちゃんに孫の顔を

見せてあげられんで・・・ ごめんな 」


「 孫はおらんでも 母ちゃんの自慢の息子の顔ば 

毎日見れるとやけん こがん幸せなことは なかばい 」


「 母ちゃんにそがん言うてもらえれば だいぶ

気が軽くなったばい

・・・あ、そろそろ お昼たいね~~  

寿司屋に寄って 母ちゃんの好きな握り寿司ば

折りに詰めてもらおうかね

家で花見弁当ってのも オツなもんたい 」 

 

「 母ちゃんは 家にあるもんでよかばってんか 」


「 家にあるもんていうたっちゃな~~

ご飯と高菜漬けぐらいしか なかばい 」


「 朝の味噌汁の残りがあったやろ? 

おかずが無かなら 高菜漬けのにぎり飯でよかよ

寿司屋が握る寿司より アンタの握るにぎり飯の

ほうが うまかばい 」


「 寿司屋が聞いたら 気分ば悪くするばい

にぎり飯は だれが握っても同じたい 

・・・ 母ちゃん・・・ 来年もな・・・ 」


「 なんね? 」


「 来年の桜も・・・ 二人で一緒に見ような 」


「 ああ、アンタが一緒に暮らしてくれるようになったけん 

母ちゃん 嬉しくて 寿命が延びそうばい

アンタが あくしゃうつほど 長生きするかもしれんばい 」


俺があくしゃうつほど 長生きしてな 母ちゃん・・・


来年も さ来年も 何回も 何十回も


2012 桜


二人で花見ばしような・・・ 母ちゃん



『Kの妄想劇場』最後まで読んでいただいて 有難うございました

これは ふと管理人が思いついたフィクションですが

この天草島のどこかで こんな親子のノンフィクションストーリーが

繰り広げられているかもしれませんね


ツッコミを入れたいそこのアナタ!

わかってますよ~~

管理人 普段天草弁をしゃべらないので 天草弁の会話が

なんかアヤシイでしょ?

あと 味噌汁と高菜漬けのオニギリの昼ご飯だと

高齢者には 塩分過剰って言いたいんでしょ?(笑)

2023年03月23日更新
キーワード: 桜の季節