天草の漁業

漁船入港

 天草は周囲を有明海、八代海、天草灘に囲まれています。これら3つの海はそれぞれ違う特徴を持っており、多種多様な魚種が水揚げされています。
 有明海は、天草下島北部に面する早崎瀬戸は潮流が速く、外洋水と内湾水が交じり合う海域であることから生産性が高く、古くから漁船漁業や素潜り漁などの好漁場として知られています。そのことを裏付けるように、この海域には年間を通じて200頭ほどのミナミハンドウイルカが生息しています。また、天草上島北部域では、サワラやトラフグが一本釣りや曳き縄漁で、コハダ(コノシロ)、コウイカ(スミイカ) 、マダコなどが網やカゴ・タコツボ漁で漁獲され、市場で高評価を受けています。
 八代海は閉鎖性が高く、球磨川などからの豊富な栄養分により漁業資源も豊富で、吾智(ごち)網や流し網、船びき網など多様な漁業が営まれています。また、年間を通じて波も穏やかであることから、浦湾では、魚類や真珠などの養殖が盛んで南部の海岸域ではアオサの養殖もおこなわれています。
 天草灘は対馬暖流の影響を強く受ける海域で、沿岸域ではさらに有明海や八代海からの影響を受け、複雑な潮流がつくり出されている上、多くの曽根(そね)や瀬が点在していることから、根魚や回遊魚の好漁場となっています。この海域では定置網や小型底びき網により数多くの魚種が水揚げされているほか、牛深地区では、棒受け網漁やまき網漁により大量のイワシ類、アジ類、サバ、ソウダカツオなどが水揚げされ、そのほとんどは「雑節(ざつぶし)」(カツオ節以外の「節」製品)に加工されており、生産量日本一を誇っています。


天草の漁業

漁業を営む際の注意事項

   天草は有明海、八代海、天草灘(東シナ海)に囲まれていることから、良質で多種多様な水産物が水揚げされていますが、漁業者はどこでも好きな漁法で水産物を漁獲できるわけではありません。漁業を営むには、一本釣りなどの自由漁業を除き、漁業協同組合の承認を必要としたり、県知事の許可により定められた操業区域や制限条件を守らなければなりません。
 また、漁業を営むには沿海地区の漁業協同組合に加入した方が漁業の承認など有利になるため、必然的に漁業者は漁業協同組合に加入することになります。
 漁業協同組合の組合員は正組合員と准組合員に分けられますが、ほとんどの漁業協同組合において、主要な漁業は正組合員に対して承認されています。正組合員になるには、一定以上の操業日数のほか、漁業を営む地区に居住することが条件となっているため、居住地によっては営むことができない漁業があります。


【天草市管内の漁業協同組合】
天草市管内の漁業協同組合

天草沿岸で漁獲される水産物

【有明海】
漁法 漁獲物
一本釣り・延縄 マダイ、マアジ、カサゴ、トラフグ、マダコ
曳き縄漁 サワラ
素潜り漁 ウニ類、アワビ等貝類、ナマコ、トサカノリ、ワカメ
刺し網等の網漁業 ヒラメ、ガザミ
タコツボ、カゴ漁 マダコ、ガザミ、コウイカ
小型定置網 マダイ、コノシロ、その他
小型底曳き網 クルマエビ
養殖 アワビ類、ワカメ、クロメ、真珠

【八代海】
漁法 漁獲物
一本釣り・延縄 マダイ、マアジ、カサゴ、トラフグ、ハモ
曳き縄漁 タチウオ
素潜り漁 ウニ類、アワビ等貝類、ナマコ、トサカノリ、ワカメ
刺し網等の網漁業 ヒラメ、ガザミ
小型定置網 マダイ、ブリ類、コノシロ、その他
小型底曳き網 シタビラメ類、クルマエビ
まき網 イワシ類、アジ類、コノシロ
養殖 マダイ、ブリ、シマアジ、アオサ、真珠

【天草灘】
漁法 漁獲物
一本釣り・延縄 マダイ、マアジ、イシダイ、イサキ、ハタ類
曳き縄漁 ブリ
素潜り漁 ウニ類、アワビ等貝類、トサカノリ、ワカメ
刺し網等の網漁業 キビナゴ、ヒラメ、モジャコ、ボラ類
定置網 マダイ、ブリ類、アオリイカ、その他
小型底曳き網 マダイ、アカムツ、アンコウ、イトヨリダイ、ホウボウ、ヒラアジ、エソ、ウチワエビ
棒受け網 イワシ類、アジ類、サバ、ソウダガツオ
まき網 イワシ類、アジ類、サバ、ソウダガツオ
タコツボ・カゴ漁 マダコ、シロサバフグ
養殖 マダイ、ブリ、クロマグロ、真珠

天草沿岸で漁獲される水産物