ハンセン病患者として、恵楓園での長い療養生活のなかで家族やふるさとを想って描かれた作品展が、天草の3会場で開催された。最初に足を止めたのは、﨑津の海岸で見た岩に根を下ろした1本の松の絵。強い海風を受け佇む風景は、孤高のなかに凛とした清々しさを感じ、この松は作者の生きざまではないかと思った。海を背にした松は枯れて今は無いが、夕日のなかのシルエットは刻まれている。

「天草灘に沈む夕日」中原繁敏 1988年 油彩があった。キャプションを紹介する。
天草出身の中原さんは、33歳のときに熊本市内の病院でハンセン病と診断されました。入所の宣告を受けて家に帰る途中、ポンポン船から見た景色を描いたそうです。
「夕日がとにかくきれいでなぁ。この世の終わりと、死ぬことを何度も考えながら、涙で二重にも三重にも滲んで見えた夕日ですたい」と語られました。奥さんと小学生になる息子さんにどのように告げられたのでしょうか。想像することすらできません。しっとりと濡れたように見えるのはそのでいだったのかと気づかされた、中原さんの人生が変わった日が刻みこまれている作品です。
作者の想いを掬い取り、押し付けるわけでもなく、淡々と書かれたキャプションから担当者の姿勢が伝わってくる。

中原繁敏(縮小712×596)
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