あれは
忘れもしない数年前の冬の事でした・・・
年明け前の１２月下旬・・・その日は珍しく冷え込み
強い北風に乗って雪が舞い散る寒い日でした・・・
当時
まだ２０代であった拙者は・・・ショアからの座布団鮃を夢見て
全身フル防寒＋体の要所にカイロを貼りまくり
風と雪を避ける為に上着のフードさえ被った状態で
牛深の砂月海水浴場に降り立ち、ロッドを振り始めました・・・
指抜きのグローブであったが故に指先はかじかみ
ルアーチェンジさえもままならない程の寒さです・・・
風の影響で普段より波気もあり、砂ヒラも混じりそうな雰囲気に
移動しながらひたすらキャストを繰り返していました・・・
この寒さと風です・・・当然のように拙者以外の釣り人はおろか
人影すらもありません・・・
砂月海水浴場のサーフを１往復したら帰ろう・・・
釣果も得られぬままでは
この厳しい寒さを乗り切るだけの心を持ち合わせておりません 爆
折り返すポイントまで残り５０ｍ程になった時です・・・
フード越しに右手後方に人が居るような気配がしました・・・
振り返ってみましたが・・・誰もいません
再びロッドを振ろうと構えましたが
やはり右手後方から視線を感じます・・・
中途半端な霊感が備わっている拙者ですが
霊的な感じではなく・・・明らかに人の気配なのです・・・
今度はフードを脱いで辺りを確かめてみました
すると・・・
防風林の間から人が出てきました
っっっ！！！！！
その姿を目にした瞬間・・・
あまりにも驚愕の姿に口は漫画のように開いたままになり・・・
失礼を承知で目が釘付けとなってしまいました・・・
この寒風吹き付け雪の交じるこの日に
齢５０代半ばとお見受けするその男性は・・・
海パン１丁っ！！！
その凛とした立ち姿のまま・・・荒れる海に視線を落としながら
悠然と波打ち際まで歩みを進めたかと思うと・・・
次の瞬間
入水っ！！！
準備運動なしかよっ！！
っと心の中でつっこんでみましたが・・・今思うとつっこみ所はそこではなく
泳いでいる事自体にすべきでした・・・
何かの目的があるのか！？
平泳ぎで進行を続ける彼の目指す先には
小さなブイが浮いています・・・
まさと言うか・・・
期待通りと言うか・・・
彼はブイまで辿り着くと・・・
ダイブっ！！！
しかし
何を手にする訳でもなく・・・数回のダイブの後・・・
ブイを後にし
更に沖合へ進み始めたかと思った矢先・・・
まさかのＵターンっ！！
卒のない綺麗な平泳ぎのまま・・・
１度もクロールに変える事なく・・・波打ち際まで帰り着き
寒そうな素振りを一切見せる事なく・・・
赤く染まったお肌を拙者に魅せ付けつつ・・・
再び防風林の中へ消えて行ったのです・・・
拙者が目にしたのは幻だったのでしょうか・・・？
否
霊体ではなく明らかに生身の人間・・・てかオジサン・・・
直感的に感じました・・・
ま、、、
負けた・・・・・と。
何に対してなのか判りませんが・・・
得も言われぬ敗北感・・・何故かこの敗北感だけが全身を蝕み・・・
拙者に竿を納めさせたのです・・・
この衝撃的なオジサマとの出会いと、強烈な敗北感を・・・
そして・・・
どうすれば勝てるのだろうか・・・？？
いや・・・
果して勝つ必要があるのだろうか・・・！？
そんな自問自答を繰り返していた若き日の事を・・・
私は
雪を見るたびに思い出します・・・