我が家の庭に、今年も蕗の花が咲き始めました。知人にいただいた八重の蕗の花です。
私には、蕗の花に関する思い出が二つあります。一つは職場の先輩のことです。非常に厳しい人でした。しかし一方後輩への面倒見の良い先輩でした。
今でも仕事に行き詰った時、その人の仕事への姿勢や言動を思い出し、困難を乗り切っています。いつもいつまでも心の支えになっている素晴らしい恩人です。
しかしその先輩は、現職中に多くの人に惜しまれながらこの世を去りました。最後はガンに侵され苦しい闘病生活でした。「何か食べたいものはありませんか?」「俺はウツボの湯引き食べたい」次の週、病室へウツボの湯引きを持って見舞いました。病状から見て絶対に食べる事は出来ない事は誰もが分かっていました。
次の日、朝一番に職場の電話。「昨日の湯引きは今までで一番旨かった。誕生日までには元気になって天草へ帰ってくる心配するな」先輩は最後に精一杯のウソをつきました。 病魔は容赦なく先輩の体を蝕み、約束の誕生日には残念なことに遺体となって帰ってこられました。先輩の死を悼み多くの弔問客が通夜に駆けつけました。
その時、庭に一輪の蕗の花が咲いていました。天草の野山が好きな人で楠浦町の実家の山から移植された黄色い蕗の花でした。家の主の死を悼む様に庭の片隅にひっそり咲いていました。
今でも天草の野山を蕗の花が彩るとき「たとえ凡打でもファーストまで全力で走れ、その繰り返しがいつか成功につながる。誰だって一回目からホームランは打てない。凡打の積み重ねがいつかチャンスをつかむことができる」後輩を激励してくださった先輩の言葉を思い出します。蕗の花の花言葉は「困難に負けない」だそうです。
もう一つは、私の結婚式の日の事です。家内の恩師にいただいた色紙に「今朝、庭に蕗の花が咲いていた。花嫁もきっと美しいだろうと思った」という言葉と蕗の花の絵が書いてありました。何気ない言葉でありましたが恩師の優しさが伝わり本当に嬉しく思いました。
結婚して33年になりますが、その時のことは今でも不思議とはっきりと覚えています。結婚記念日は11月11日。長男の誕生日でもあります。そろそろ天草の野山に蕗の花が咲き始めました。
結婚記念日には感謝の気持ちを込めて今年も花束を渡したいと思っています。 |