オブザーバー役のつまがるです。久しぶりにコラムを依頼されました。
今日は、現在、私の研究室で始めようとしているあるプロジェクトの紹介です。
ごくありふれた草花である薺(なずな)、いわゆるペンペン草ですが、これが目の前に咲いていても、普段それに気づく人はいないと思います。
だいたい、私などは薺(なずな)がどんなものかもよく知りませんので、気づきようがないのですが・・・
ところで松尾芭蕉は、薺(なずな)に関して、こんな句を詠んでいます。
よく見れば薺(なずな)花咲く垣根かな
さすがは芭蕉。普通の人だと気づきもしないペンペン草に感動したようです。
一般的には、この句がどんな感じで解釈されているか、俳句の知識に乏しい私はよくは知りません。
ただ、ペンペン草という、踏みつけていても気づかないほどのありふれたものであっても、よーく見れば、実は新鮮な感動を与える対象なのだ、ということをこの句は教えてくれているように思えます。
芭蕉の優れた感性には驚きです。
ぺんぺん草に感動を覚える芭蕉の鋭い感覚に驚かされたわが研究室では、この芭蕉の感性を継承すべく、あるプロジェクトを立ち上げました。私たちは、これを、
薺(なずな)花咲くプロジェクト
と呼んでいます。
これは、日常に埋没してしまい、人々が気づかなくなっている「地域の記憶(価値)」を蘇らせるためのプロジェクトです。
具体的には、街などを複数人でゆっくりと、それこそペンペン草にもちゃんと気づけるような速さでゆっくりと歩きながら、その場所の特徴を情報化していくものです。
日常の中に埋没している微細な変化を捉えようという高度に知的な挑戦です。
しかし、残念ながら、めぼしい成果はまだ何も得られていません。
現在は、わが研究室と近隣自治体の若手職員有志とで細々と行っていますが、今後は、うちわEBI’sのメンバーを核にしてちょっと真面目に「薺(なずな)花咲くプロジェクト」を推進していく予定です。
ひょっとすると、ある日、プロジェクトメンバーが薺(なずな)を探しに天草の地にふらりと現れるかもしれません。その際は皆様どうぞよろしくお願いします。