菖蒲華 あやめはなさく

七十二候だより いのちの暦 [第62回]
第二十九候 夏至 次候
菖蒲華 あやめはなさく

7月号は届きましたか。

片寄斗史子

週末、土曜日(27日)の夕方は、ひさしぶりの
夕焼けに、雨あがりの景色が彩られました。
そして、夜になっても明るい水色の空。

日曜日。私のベランダにはきれいなツユクサ。
ご近所にはノウゼンカズラや夾竹桃。
夏休みに入った7月の末のように感じていても、
まだ、今は6月の終わり。

確かに家の中の、いただきもののアジサイの匂いは
まだ夏には早すぎて、今は「菖蒲華(あやめはなさく)」。

七十二候に出て来る花の数は案外少なく、
なじみのある花ばかりではありませんが、
菖蒲の花は、身近でなくなった花の代表かもしれません。

菖蒲園のようなところは別として、
ちょっと歩いて出会うなんてことはなくなりました。
螢と同じで、川べりとか沼地など、
水けのあるところに、かつては背丈をそろえて伸びていました。

生け花を習っていた私の母親は菖蒲の花が大好きで、
田んぼに水を引く小さな川の端の畑、
その水際全部に菖蒲を並び植え、花咲くころには
誇らしそうに摘んでは生けていました。

生けられた菖蒲の花は、母親が自慢に応えるように、
長いまっすぐの茎を精いっぱい伸ばして
そこに載ったペン先のような蕾や紫色の大きな花弁を
持ち上げていました。



東京に出てきてからというもの、すっかり忘れていた菖蒲の花が
昔の人々の心をとらえていたのだと知ったのは
日本画の画家のほとんどが、必ずといっていいほど
菖蒲やアヤメ、カキツバタを描いていると気づいたからでした。

ああ、こんなにも多くの人に描かれてきたのかと
その絵の素晴らしさはもとより、
画家の心をとらえた花が菖蒲であったことに
驚いたのでした。

そんなことを思いながら、近所の美容室に
お礼を言いに行くことにしました。
お届けしたばかりの7月号26ページ、
手づくりのスロープの主は、私が長年お世話になっている
美容室のオーナーです。

このスロープも素敵ですが、私が大好きなのは、
オーナーの、周囲の空き地の使い方、小さなガーデンのセンスです。

お店は都か区、つまり公共の遊歩道に面して建てられたビルの1階ですが、
土地の境界に植栽された垣根、その隙間に、彼は気の利いた植物を植え、
トマトや万願寺とうがらしなど夏野菜も植えているのです。

行政の植栽だけでは空き地ができたり枯れ地もできます。
そんな中で、美容室の周りは濃い緑に包まれています。
「どうぞ植えてください」と、行政の了解も得たと言います。

大きなトマトと筆先のようなとうがらしの、濃い緑――。
ちょっとした空き地を少しずつ、きれいに緑で埋めていく。
きっと誇らしいことだろうなと思います。

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「天草を結ぶ会(あまゆい)」
amayui@aromaherb-coo.jp

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2015年07月03日更新