最近、仕事で写真の修整をよく依頼される。

たとえばタレントの髪の毛を少し増やしてほしいとか、蚊に刺された跡を消してほしいとか、建物の前を覆っている電線を消してほしいとか、さまざまだ。

これは以前、製版屋さんにお願いしていたのですが、パソコンの普及、画像加工ソフトの進歩によって写真の修整は飛躍的に容易になり、今や誰でも簡単にできるようになりつつある。

だからなのであろうか、クライアントがいとも簡単に「修正してよ!」と言ってくる。

蚊に刺された跡ならまだいいが、黒目をもっと大きくとか、ホクロやイボを消してとか小さくしてとか、実際にある身体の特徴を消すのはいかがなものか。

実際に本人に逢ったら、あれ? 髪の毛が少ない、とか。やけに大きなホクロがある、とか。

そのうちもっと過激になってしまって、本当の自分が分からなくなってしもうことのないようになったりして。

綺麗に見られるのは誰でも嬉しいこと。でも、虚偽はいけません。

今の時代、整形手術などで顔や身体そのものを替えてしまう人もいる。テレビの番組で簡単に取り上げて、整形手術を市民権化して、安易に手術を受けるような風潮を産み出しているように感じる。将来の我が子が自分と似ていなくても平気なのだろうか? 子どもにも整形させればいいと思っているのだろうか?

近い将来、いや10年後には似ても似つかぬ親子が、町中を闊歩する時代がやってくるのか。想像するになんとも異様な光景である。

人間の倫理観は、グズグズとフシダラな谷底に落ちていってしまうような、とても不安な気持ちになるのは、私だけであろうか。
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