天草本と呼ばれる【平家物語】・【伊曽保物語】など47種(うち12種現存)は、1591年~1597年、日本最初の活版印刷本として天草のコレジヨ(大神学校)において、グーテンベルク印刷機によって印刷された。
 原本は、現在イギリスのブリティッシュミュージアム(大英博物館)別館のライブラリーに所蔵されている。            ※ ポルトガル式ローマ字で印刷されている。


  天草本 イソップ物語(PDF)

https://dglb01.ninjal.ac.jp/BL_amakusa/
       ▲クリックして下さい。
 

イソポのファブラス(物語)

天草本「イソップ物語」

   (翻字)


        イ ソ ポ の
         ファブラス(物語)
      ラテンを和して 日本の
       口となすものなり

 

                      (図)

 

  イエスのコンパニア(耶蘇会)の
  コレジオ天草においてスペリオスの御免
  許としてこれを版に刻むものなり。
  ご出生より(キリスト生誕)1593年

 

      ※翻字は京都大学文学部編【伊曽保物語】を引用

 



      イソップ が 生涯の物語

 

イソップが生涯の物語

 


 

(翻字)
     イソップ が 生


              涯の物語 略

     これをマシモ・プラヌーデ
  と言う人 ゲレゴのことばよりラチンに翻
  訳せられしものなり


  ウローバのうちヒリジャと言う国のトロ
  ヤという城裡の近辺にアモニヤという郷が
  おじゃる.その郷に名をばイソポという
て異形不思議な人体がおじゃったがその時代
  エウローバの天下にこの人に勝って醜い者
  もおりなかったと聞こえた。まず頭は尖
  り、眼はつうぼう、しかも出て瞳の先は
  平らかに、両の頬は垂れ、首は歪み、丈
  は低う、横ばりに、背は屈み、腹は腫れ、

垂れ出てことばは吃りでおじゃった。これらの
  姿をもって醜いこと天下無双であった如
  く、知恵の長けた者もこの人に並ぶこ
  とはおりなかった。
  ある時主人イソホが上を思わるるよう
  は、「公界の捌き、或いは内緒の取扱いな
どはいかにも似合うまじいと見ゆればせめて農人
  の 所作をなりとも宛わず」と思い定め


 

 

 

        犬が肉をふくんだこと (天草読本 より)

 

イソホ犬が

 

 

    犬が肉をふくんだこと

 

ある犬ししむらをふくんで川を渡るに そ
の 川のまん中でふくんだししむらのかげ
が 水の底に写ったを見れば おのれがふ
くんだよりも一倍大きなれば 影とはし
らいでふくんだをふてて 水の底へ頭を入れ
てみれば本体がないによって即ち消え失せ
てどちをもとりはずいて しっついをした。



 

 

          読誦の人へ対して書す

読誦の人へ

 (翻字)


          読誦の人へ対し

          て書す


  惣じて人は実もなき戯れごとには
 耳を傾け、真実の教化を聞くに
 退屈するによって耳近きことを集めこの
 物語を板に刻むこと、たとえば樹
 木を愛するに異ならずその故は樹には
 益なき枝葉多しといえども、その中に
 よき実あるを以って枝葉を無用と思わぬ
 が如くなり。故にスペリヨレスの仰せ
 をもって、この物語をラテンより日本の
 ことばに和らげ、色々の穿鑿の後、
 板に開かるるなり。これを真に日本の
 ことば稽古のために頼りとなるのみならず
 よき道を人に教え語る頼りともな
 るべきものなり。

 


 ※翻字は京都大学文学部編【伊曽保物語】を引用

 

 

     
 


         伊蘇物語   貴重な明治初期の毛筆書体和綴本
 毛筆イソップ 明治のイソップ物語
  
         明治五壬申官許
     通俗 伊蘇(イソツプ)物語
            渡部氏蔵梓
            (富岡三文字屋旅館蔵)