みなさんこんにちは!うちわEBI'sの忠文です。

(今日は長文になってしまいましたm(_ _)m)

毎回コラムって書くネタに迷いますね。あれやこれやと起きる日常の中から、これだ!っというのを見つけるのは、なかなか難しい。というわけで、今日は昨年末に大学を舞台に実施したワークショップについて書きたいと思います。

唐突ですが、私はノットワーキング塾という団体に所属しています。この団体は何かと言いますと、地域の情報化を学ぼうと有志によって結成されたグループです。EBI'sに似ていますね。でもこちらは学生ではなく、主に社会人で構成されています。

さてこのノットワーキング塾、月1くらいで勉強会などをしているのですが、先月は1日掛けてワークショップを実施しました。その名も、「県立大学『場所の力』ワークショップ」です。

内容は、所謂「まち歩き」を大学内で実施して、その内容を絵地図にまとめようと言うものでした。もう7年近くも大学に通ってしまっている私なのですが、歩けば色んな思いが巡り、発見することがたくさんあります。




(航空写真を片手に学内歩き。)


このワークショップに先立って、私たちは大学という場所に眠る記憶を呼び起こして見ようと思い立ちました。実は、熊本県立大学がある場所は、以前は熊本空港 だったようです。(先日熊本日日新聞でも記事になっていたので読まれた方もいらっしゃるかも)さらにその前は、陸軍の飛行場だったようですね。大学の記念 誌や、かつての航空写真などを辿って行くと、学舎が立つ場所に飛行機の発着場があり、たくさんの出会いや別れがあったことが想起されました。

当時の健軍町にあった熊本空港は、10年ほどで現在の場所へと移転しています。今や大学の住所は月出と変わり、往時を偲ぶものはほとんどありません。しかし、学内にただ一つ。かつても、そして今も残っているものがあります。それは「松」です。現在学長をされている米澤先生が、講義の中で良くこの松のことを語って くれていました。「見送りの松」と呼ばれるこの松は、年代毎の航空写真にもその姿を留めていて、今もたくさんの松ぼっくりを学内に落としてくれます。

近寄ってみると、この松はテーダマツという名前のようです。アメリカに自生するようで、日本には明治の頃にやってきたようです。見上げれば遥に頭上高く、今のようにビルがなかった頃、空飛ぶ人の目に幾千回も映ったのではないでしょうか。




(テーダマツ、25〜30mにも成長するらしい。)


ワークショップでは他にも様々なものに目が留まりました。

・見送りの松。
・たくさんあるモニュメント。その付近にある解説文。
(※天草陶石を使ったものも!)
・ベンチもたくさん。キノコが生えています。
・初代学長の銅像
・ドクターヘリ
・隠れた憩いの場
・意外に大きな給水塔(県大タワー)
・展示される豊後街道
・供養塔の存在
・知らなかった施設の名称
・食堂裏の庭園の存在
・学生製作の建築物
・球磨工業の看板
・ネコ達
・育てられている野菜達
・キンモクセイ
・クスノキ
・イチョウ
・etc...

こんなもの達を発見してどうするんだ。と思われる方もいると思うのですが、私はこんなワークショップも「地域の情報化」だと考えています。以前は見過ごし て、思い過ごしていたそれぞれに、よりはっきりとした言葉と行動で形を与えて行く。それは他者に伝えることが出来て、それぞれを組み合わせることも出来、新しいものを創造することが出来ます。

そんな地域の情報化と関連すると思うものが「場所の力」です。場所の力とは、同名の”The Power of Place”という団体を主催したドロレス・ハイデンの言葉です。場所の力は、都市の再開発や都市の保存に際して発せられたものです。彼女が書いた同名本の訳者が、その言葉を紹介しています。

「場所の力. それはごく普通の都市のランドスケープに秘められた力である. 共有された土地の中に共有された時間を封じ込み,市民の社会的な記憶を育む力である.」

本の中では、場所の記憶を掘り起こし、それによって調和のとれた都市を創る各種の試みが紹介されます。(これが実に感動的なのです!)

私はこの場所の力を育んだり、また顕在化させるのに、地域の情報化という考え方や実践は役立つ(または、その活動の中に既に織り込まれている)と思います。それは都市計画や、公共建築に対してだけでなく、より広範な地域づくり、まちづくりにあっても重要に思うのです。

こんなことを書いたのも、天草Webの駅に中に、その場所の力に繋がる可能性を感じたからです。それは、牧島地区振興会さんが公開している「牧島地区今昔物語」です。私はこのコンテンツが大好きです。地区の住人でもないのに見てしまいます。写真に宿る息遣いが聞こえて来るようで、大きな歴史(町史に残るような)が決して振り返らない、住んでいる方々の日常の記憶を力強く宿しています。

ノットワーキング塾で議論する中で、大きな歴史というのは素晴らしいけれど、扱いも難しいということを話していたことがあります。それに対して小さな歴史、こんな息遣いの宿る記憶の断片を集めること、それを皆で振り返ることの出来る状況を作り出すことに可能性を感じているのです。

・・・

随分長々と書いてしまいました(笑)

「場所の力」は学芸出版社より発売されています。ただ、現在絶版?なのかAmazonなどで調べても発売停止中です。なのでお近くの図書館から、相互貸借などで借りられることをお薦めします。少なくとも県立大学の図書館にはあります。名著だと思いますよ。


キーワード: コラム
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